メモ帳

web拍手への返信用に用意しましたが、雑記としても使うかもしれません。

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新刊の通販ページをBOOTHにて開設しました。

ta0o0o0o.booth.pm

イベント当日までにご注文頂いた分はお取り置きしておいてイベント後に発送いたします。

ピクシブアカウントをお持ちでなく、通販をご希望の方はお手数ですがサイトのお問い合わせからメールアドレスを併記してご連絡ください。自家通販でお届けします。

 

おまけ本は河野(23歳・会社員)が同僚と話したり古淵のことを思い出したりする短い漫画です。大人になった河野が少し古淵と似た雰囲気を持っていたらいいなと思います。良くも悪くも自分にとって存在感の大きすぎる人が突然いなくなってしまったあと、その穴を埋めるように雰囲気や見た目や癖がどことなく似ていく現象、好きです。

私の描く漫画は暗くて陰惨で救いがないと自分でもわかっていますし、よくそう紹介するのですが、陰惨で救いのない物語は手段であって目的ではないということをなんとなくここらで明言しておきたくなりました。特に誰からも質問とか受けてないので自己満足です。隙あらば自分語りってやつです。

伊勢物語』の中の芥川というお話、有名だとは思うのですが、簡単に紹介します。

男が身分違いの恋に落ち、三年もかけて女をなんとか攫って駆け落ちを決行します。道中、草についた露を指して女が「あれは何ですか」と問いかけても、追っ手を恐れて急いでいるので答えることもできません。そのまま、鬼が出ると噂の地域に差し掛かり、女をあばら家の中に隠して自分は外で見張りをします。しかし、あくる朝、あばら家を覗いてみると女は鬼に食われてしまって跡形もありません。男は「あれは何ですかと問われたとき、露ですよと答えて諸共に消えてしまえばよかった」と嘆きました。

坂口安吾が『文学のふるさと』でこのお話について、このむごたらしく救いのない結末にこそ我々は生存そのものがもつ孤独を見る、この孤独こそが我々のふるさとなのだというようなことを述べています。

女を思う男の情熱が激しければ激しいほど、女が鬼に食わるというむごたらしさが生きるのだし、男と女の駈落のさまが美しくせまるものであればあるほど、同様に、むごたらしさが生きるのであります。

 それならば、生存の孤独とか、我々のふるさとというものは、このようにむごたらしく、救いのないものでありましょうか。私は、いかにも、そのように、むごたらしく、救いのないものだと思います。この暗黒の孤独には、どうしても救いがない。我々の現身は、道に迷えば、救いの家を予期して歩くことができる。けれども、この孤独は、いつも曠野を迷うだけで、救いの家を予期すらもできない。そうして、最後に、むごたらしいこと、救いがないということ、それだけが、唯一の救いなのであります。モラルがないということ自体がモラルであると同じように、救いがないということ自体が救いであります。

私はこのふるさと概念に近づきたいだけです。目標はそれだけです。ただこのふるさと概念、あまりに抽象的かつ内面的で、要するに物語を介さずに生み出すことのできないものなので、むごたらしいストーリーや不幸なキャラクターが必需品だという話です。

2019年1月分のお返事

> よろずリンクから来ま...さん

 サーチサイトの方からお越しいただきありがとうございます。

そう言って頂けて本当に嬉しい限りです。人間の負の感情と猟奇的な描写が三度の飯より好きな人間なので、そのあたりの表現を肯定していただけると描いてよかったなあと思います。共犯はなんとか2月中には完結させたいと思っております。

 

> アイコンメーカーがす...さん

ありがとうございます。遊んで頂けてとても嬉しいです。作った甲斐がありました。

更新が滞りがちで申し訳ありません。

いま流行りのPicrewでちょっとしたキャラクターアイコンメーカーを作ってみました。

人外パーツ多めです。

picrew.me

 

例↓

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こんな感じで私が描いたっぽいキャラクターを生み出せます。

まだ作りたてなのでパーツや色も少ないですしちょこちょこミスも見つかっているのですが、随時修正と追加を行っていきますので暇つぶしにでも遊んでいただけたら嬉しいです。

自作発言の他に禁止事項はないのでお好きなように使っていただけたらと思います。

「弦月とともに正餐を」についての話

以前、「共生を志向する知的生命体」について色々考えていたことを書いてみたらなかなか楽しかったうえ、自分が漫画で何を描きたいのか少し整理できた心地がしたので、ちょくちょくそういう文を書いていこうかなあと思います。まずは弦月で。

 

この話を描いた動機は、意図しないカニバリズムと自主嘔吐(自分で自分の口に指を突っ込んで嘔吐反射を刺激すること)の二つを織り込んだ話を描きたい!というものでした。これまで描いてきた創作BLのなかでも特に気色悪い話になったような気がするのでかなりお気に入りです。

 

お気に入りとはいえ、いま読み返してみるとわかりづらかっただろうなと思われる部分が多く、自分の技術不足を悔やむばかりなのですが、弦刻の「これでずっと一緒」は相手の胃の中に自分の肉体の一部が収まったことについてではなく、もっと抽象度の高い意味で言っています。正羽にとってこの一件は人生最大のトラウマなわけで、きっとことあるごとに思い出すはずです。食事をしたり、絵画を見たりするたびに弦刻のことを思い出すはずです。そうやって自分に繋がる記憶の引き金を正羽の人生にばら撒くことで、正羽が家に帰っても、それから二度と会いに来なくても、自分のことを繰り返し思い出さずにいられなくすることが弦刻の目的です。ある出来事が人生のターニングポイントになってその前後で価値観が大きく変わってしまっているというのは立派な呪いですよね。というわけで、これは記憶の呪いの物語(として描いたつもり)でした。

ここまで気持ち悪い方向に愛憎を拗らせたメンヘラを今後新たに生み出す自信は正直ないです。

 

この話を描くにあたって参考にした作品というものは正直ないのですが、『暗黒館の殺人』の、一夜の食事が生涯を拘束する呪いとして機能するという部分には影響を受けているかもしれません。

同人誌を再録しました

www.pixiv.net

www.pixiv.net

去年発行した創作BL同人誌2冊を再録しました。個人サイトの方にも載せるつもりなのですが、2冊合わせて80ページ超あるのでリサイズに手間取っています……。ピクシブへのリンクだけ取り急ぎ貼っておきます。

 

特別に意識していたわけではないのですが、並べてみるとⅠは黒い衣装が多く、Ⅱは白い衣装が多い(というか白衣がほとんど)という対照的なキャラデザになってますね。

Ⅰはフルアナログ、Ⅱは線画だけアナログでトーンなどの処理はデジタルでやっています。Ⅱの作業中にペンタブが壊れ、新調した際にクリスタが同封されていたのでついでにデジタルに移行してみたのですが、この頃はまだ全然慣れていなくて、今だったら10分くらいでできる加工に1時間以上かけていた記憶があります。「共生を志向する知的生命体」もⅡと同じく線画までアナログで仕上げがデジタルですね。「共犯と形見分け」はフルデジタルです。

読書感想文

坂口安吾『白痴』(新潮文庫)を読んでいます。

『私は海をだきしめていたい』、タイトルがいきなり最高なんですが、「私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜ってしまう人間だ」という冒頭の一文がいきなり強力すぎて心臓をわし掴みされたみたいな気持ちになりました。

人間は究極的には孤独だという諦めと、そのくせ他者を美しいとか何とか言って求めたがる諦めの悪さと、海のような巨大で無慈悲で無感情な何かに全てを託してみたいという破滅願望一歩手前の欲求と、そんな複雑でどろどろしたいろんな考えが淡々と寒々しく書かれている綺麗な短編でした。破滅願望とないものねだりが二大性癖なのでこの小説に出会えてよかったです。

いま探したら青空文庫にありました。こちらは底本が全集なので旧字や旧仮名遣いが多いですね。

坂口安吾 私は海をだきしめてゐたい

 

安吾の小説には他にも好きな文がたくさんあります。『夜長姫と耳男』の「好きなものは呪うか殺すか争うかしなければならないのよ」は座右の銘にしたいくらい好きですし、『青鬼の褌を洗う女』の「このまま、どこへでも、行くがいい。私は知らない。地獄へでも」も大好きです。どこか読む人を突き放すような冷たさがあっていいですよね。