メモ帳

web拍手への返信用に用意しましたが、雑記としても使うかもしれません。

「弦月とともに正餐を」についての話

以前、「共生を志向する知的生命体」について色々考えていたことを書いてみたらなかなか楽しかったうえ、自分が漫画で何を描きたいのか少し整理できた心地がしたので、ちょくちょくそういう文を書いていこうかなあと思います。まずは弦月で。

 

この話を描いた動機は、意図しないカニバリズムと自主嘔吐(自分で自分の口に指を突っ込んで嘔吐反射を刺激すること)の二つを織り込んだ話を描きたい!というものでした。これまで描いてきた創作BLのなかでも特に気色悪い話になったような気がするのでかなりお気に入りです。

 

お気に入りとはいえ、いま読み返してみるとわかりづらかっただろうなと思われる部分が多く、自分の技術不足を悔やむばかりなのですが、弦刻の「これでずっと一緒」は相手の胃の中に自分の肉体の一部が収まったことについてではなく、もっと抽象度の高い意味で言っています。正羽にとってこの一件は人生最大のトラウマなわけで、きっとことあるごとに思い出すはずです。食事をしたり、絵画を見たりするたびに弦刻のことを思い出すはずです。そうやって自分に繋がる記憶の引き金を正羽の人生にばら撒くことで、正羽が家に帰っても、それから二度と会いに来なくても、自分のことを繰り返し思い出さずにいられなくすることが弦刻の目的です。ある出来事が人生のターニングポイントになってその前後で価値観が大きく変わってしまっているというのは立派な呪いですよね。というわけで、これは記憶の呪いの物語(として描いたつもり)でした。

ここまで気持ち悪い方向に愛憎を拗らせたメンヘラを今後新たに生み出す自信は正直ないです。

 

この話を描くにあたって参考にした作品というものは正直ないのですが、『暗黒館の殺人』の、一夜の食事が生涯を拘束する呪いとして機能するという部分には影響を受けているかもしれません。